
1990年代にセキュリティソフトを活用していた方であれば、眼鏡姿のピーター・ノートン(Peter Norton)氏が登場する黄色い画面に覚えがあるのではないでしょうか。
本記事では、米カリフォルニア州に本社を置くシマンテック社の主力ソフトウェア「ノートン セキュリティ」について解説します。
Contents
ノートン セキュリティの特徴や導入メリット
ノートン セキュリティの特徴を一言で示すなら「トータルバランス」と言えます。また、老舗ブランドゆえに長年使い続けているファンに支えられている製品です。
膨大なユーザーデータを保有する“老舗”
シマンテック社設立は1982年。今日の主要なセキュリティソフトウェア企業は1990年台に入ってから設立されており、シマンテック社はセキュリティソフトウェア業界で「老舗」と呼ばれています。
後に自社とノートン セキュリティの前身ノートン ユーティリティをシマンテック社に売却したピーター・ノートン氏ですが、「ノートン先生」の愛称で呼ばれていたことからも、当時から絶大な支持を集めていたことが垣間見られます。
セキュリティソフト各社は製品のユーザーから同意を得た上でコンピューター上の情報を各社へフィードバックする機能を活用し、セキュリティソフトの品質向上に役立てています。ノートン セキュリティでは「ノートン コミュニティウォッチ」という機能名で搭載されていますが、「老舗」であるということは、長期間にわたる膨大なユーザーデータがシマンテック社に蓄積されていることを意味します。
トータルバランスの良いソフトウェア
後述の第三者機関によるセキュリティソフトウェアの評価でも分かるとおり、正直なところノートン セキュリティが性能評価テスト上で著しく好成績だとは言い難いです。ただ、値だけに固執せず「突出した機能はないが不可もなく、バランス良く設計したソフト」というのがノートン セキュリティです。
例えば、ノートン セキュリティのプレミアム版では他の主要なセキュリティソフトウェアではほぼ搭載していない「バックアップ機能」があります。
画像や音楽などバックアップのファイルの種類、バックアップするディレクトリ、保存先のディレクトリ、バックアップのタイミングなどを設定してデータをバックアップできます。バックアップのスケジュールは自動や週ごと、月ごと、手動バックアップと選べ、設定は「バックアップセット」として保存できます。
データのバックアップは、セキュリティソフトとは別にバックアップソフトを使用して対応している方も多いのではないでしょうか?
ユーザーが自身のデバイスやデータを保護するときに必要な機能を「バランス良くトータルで提供する」というノートン セキュリティの開発姿勢がよく現れています。
何もしなくても守られる
シマンテック社の企業方針は「組織、政府機関と消費者がどこにいても最も重要なデータを保護する」ですが、使いやすさを超越して“ユーザーは何もしなくても保護される”世界を目指しているのがシマンテック社の製品です。
例えば、ノートン セキュリティのインストール直後、「オンラインの安全」を設定しようとする場合、インストール後何も設定していないのに、筆者の標準設定のブラウザであるInternet Explorerがデフォルトで表示されすぐ横に設定ボタンが。
「今すぐ設定」をクリックすると、ブラウザが立ち上がり画面に「すべてのノートン機能を有効にする」ボタンが表示されます。
このボタンをクリックするだけで、検索結果ごとにサイトの安全性とノートン評価を表示する「ノートン セーフサーチ」やオンライン取引の実行中のセキュリティを強化する「ノートン ID セーフ」などの拡張機能をすべて有効にできます。
ノートン セキュリティの性能
シマンテック社の独特な経営方針がノートン セキュリティの性能を生み出しています。
防御力・パフォーマンス
脅威からの防御力、動作の快適性などのパフォーマンスというセキュリティソフトの2大評価基準を見てみます。
セキュリティソフトウェアの評価を行う第三者機関が複数存在します。ただ、指標の違いにより結果は各機関でばらつきが大きいため、ノートン セキュリティに関する複数の調査を確認していきましょう。
独立系調査会社MRG Effitasによる2018年Q4におけるパフォーマンス評価では、シマンテック社の製品は2位。セキュリティ製品の性能評価機関としては有名なAV-Comparatives.orgによる2018年7月から11月度の調査によると主要セキュリティソフトウェア5社の中で防御率2位を獲得しているものの、シマンテック社が1位を獲得している調査は数えるほどしかなく防御力・パフォーマンスという数字での評価としても、「突出してはいないが不可は出さない」というノートン社の開発姿勢が見て取れます。
企業名 | 防御率 |
---|---|
Trendmicro | 99.90% |
Symantec | 99.60% |
Avast | 99.60% |
Kaspersky Lab | 99.50% |
ESET | 98.90% |
参照Real-World Protection Test July-November 2018(Summary Result)/AV-Comparatives
ノートン セキュリティの性能を実現する背景
ノートン セキュリティがトータルバランスで勝負をしている背景のひとつとして、シマンテック社の企業買収の経営方針に触れるべきでしょう。最高経営責任者グレッグクラーク氏もCEOメッセージで「戦略的なサイバーセキュリティ企業の買収でセキュリティソフトウェア業界をリードする」と明言しています。
ノートン セキュリティのロゴマークの冒頭この「V」の字のデザイン、どこかの企業と似ていないでしょうか。
そう、電子証明書で圧倒的な知名度を誇っていたベリサイン(Verisign)社のロゴマークの一部と同じです。日本においては2012年日本ベリサイン株式会社を買収したことにより、シマンテック社は電子証明書の分野でもその高い技術と知名度を手に入れました。ID盗難保護機能においても、コンシューマー向けにID盗難保護サービスを提供するLifeLock社を買収することにより機能強化を行ってきました。
ノートン セキュリティは「トータルバランス」とされる理由は、“企業買収により足りない穴はすべて埋める”という経営戦略が色濃く反映されているからなのです。
製品ナインナップと価格
「ノートン セキュリティ」の製品ナインナップは次のとおりです。
製品 | 価格 | 特徴 |
---|---|---|
アンチウイルス ベーシック Windows限定 (インストール1台まで) |
2,980円(1年版) |
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スタンダード (インストール1台まで) |
3,230円(1年版) |
|
デラックス (インストール3台までマルチデバイス) |
5,480円(1年版) 11,080円(2年版) 13,880円(3年版) |
|
プレミアム (インストール5台までマルチデバイス) |
7,980円(1年版) 14,080円(2年版) 16,480円(3年版) |
|
※2019年3月21日調べ/いずれも税抜き価格
ノートン セキュリティの評判・口コミ
ノートン セキュリティは日本国内でも“黄色い箱のセキュリティソフト”として有名ですが、特に米国内では50%のシェアを誇ります。ここでは、海外での評判や口コミを紹介しましょう。
良い口コミ
My computers stay nice and fast, and with not a single virus issue since I started using Norton again, they are reliable as anything. That’s what I buy this software for.
(私のコンピューターはずっと調子が良くもたついていません。ノートンを使い始めてからウイルスの問題が1つもなくなったので信頼できます。)
引用:ノートン セキュリティ(デラックス)/Amazon
悪い口コミ
There are too many pop-ups and notifications promoting their product. At least once a week, there is some kind of notice selling their product.
(商品を宣伝するポップアップや通知が多すぎます。少なくとも週に一度、シマンテック社の製品の売り込み通知があります。)
引用:ノートン セキュリティ(デラックス)/Amazon
なお、宣伝通知は設定からオフにできます。デフォルトがオンなので設定に気が付かない方はポップアップを見続けるのは間違いないようです。
まとめ
以前は「ノートンは重い」と言われていましたが、クイックスキャンにかかった時間は筆者の環境での計測によると12,810ファイルで1分33秒。Web閲覧も体感で重くなってはいません。
ある機能が突出して優れている必要はないが、トータルバランスと一般ユーザーが使いやすいという観点で選択したい方にはノートン セキュリティをおすすめします。